@ディプロム

 フランスのフットボール選手育成システムは、世界的によい評価を得ている。
 僕は特にディプロムとか資格、肩書きに興味はなかった。実力が重要だといつも考えていた。その考えは今も変わらないし、今後も変わらないだろう。多分、日本のシステムの中で18才まで生きていたので、その反作用かもしれない。資格など意味がないと思っていた。

 日本の大学は、入試が難しくて入学後は、【1】モラトリアムであることは、誰でも了解しているところだと思う。20年前、都立武蔵高校の生徒であった僕は何年も時間を無駄にするつもりは全くなかった。これ以上こういう甘い世界にいるのはつまらない、勝負してみたいと考えていた。僕の脳が【2】テストステロンを素直に受け入れ反応していた。本来、人はこの時期に自立するための試練を越えなければ、一生依存的なメンタリティーが消えないのではと今は想像している。言葉は10才までに覚えないとネイティブスピーカーになれないのと同じ様な種類のこととして、群で生活する動物の雄の子がある時期になると群から離れなければ雄として、認められない、自立できない。というようなことが人間にもなにかしらあると思う。

 その自立の時期に日本の大学はモラトリアムを子供に与え、最も甘えていられる状況を提供している。しかも大学進学率は異常な高さだ。会社に依存し続ける終身雇用制を維持するためにはよい洗脳方法だと思う。(その合理性は、今もう無いことは誰の目にも明らかであるが。)

 冷静に考えれば、まだ子供といえる18才で、人生がほとんど決まってしまうなんて、誰しもおかしいと思うはずだが、習慣というものは恐ろしい。いまだに何々大学卒ということに幻想を持っている親はいると思う。今考えると高校さえも行くべきではなかったと本当に、僕は後悔している。

 しかし、いいものはいいというのは、とても常識的だと思う。フランスの育成システムは、まず良いコーチを作ることから始まった。そのコーチディプロムを取ることは、意義がある。なぜならすばらしい内容で、実力をつけることができるからだ。

 僕は今までずっとフットボールで生活してきた。プロフットボール選手であったし、引退してからも、もちろん他のこともする自信はあるが、フットボールに関わる仕事以外はまだしたことがない。フットボールは仕事であり、生活であり、僕の子供達の教育のベースでもある。

 フットボールのコーチディプロムを取るということは必然的に教育学や、生理学、心理学、解剖学、医学、統計学、数学等も学ぶことになる。それだけではなく、メディアとの接し方や、経営学も学ぶことになる。

 僕にとって極めて興味深いことだ。もちろん僕はボールをけることや走ること、体を動かすことがなによりも好きだが、いずれ必ず体は老化して行くし、自分が得られなかった環境や、刺激を適切な時に子供達に与えたいとおもった。
今後体力的に確実に落ちて行く自分に投資するよりも、これから身体的精神的にどんどん成長して行く子供達に投資する方が、可能性が高い、期待値が高い。例えば語学は、10歳前後までなら、環境さえ与えてあげれば、簡単にバイリンガルになれる。36才の僕は何万時間勉強しても、ネイティブスピーカーにはなれない。大人の脳の可塑性はすでに低下してしまっているからだ。
子供の脳は可塑性が高く、必要なときに必要な刺激を与えてあげれば、極めて能率良く学習することができる。

 僕自身に対する投資に関しては、子供の教育に必要な情報を得るための投資(勉強)が、最も期待値が高いと考えた。それは自分の子供にも、他人の子供にも有効に使える。子供の教育以外の分野にも色々応用できる。



【1】モラトリアム《外》
[moratorium<ラ](1) 支払延期,停止.戦争,恐慌など非常事態の場合,法令により一定期間,債務の返済を猶予させること.〈昭〉(2)【経】債務履行を拒否すること.〈現〉(3) 猶予期間.青年が自己同一性(アイデンティティー)を獲得するまでの試行期・実験期間.〈現〉★エリクソン[E.H.Erikson]が青年心理学に導入.

【2】テストステロン
男性ホルモン だんせいホルモン Male Sex Hormone アンドロゲンともいい、男性の生殖器から分泌されるホルモン。二次性徴をうながす。男性は思春期をむかえると、生殖器が発達して精子が成熟してくる。また声が低くなったり、わきの下や性器の周りに体毛がはえたり、筋肉や骨格が発達して男らしくなる。このような状態を男性の二次性徴というが、これをうながすのが男性ホルモンである。おもに精巣(睾丸)でつくられる。精巣から分泌された男性ホルモンは、血液にまじって全身を循環したのち、尿や便にまじって排泄(はいせつ)される。精巣でつくられるおもな男性ホルモンは、テストステロンとアンドロステロンである。男性ホルモンには副腎皮質から分泌されるものもある。また、女性でも少量分泌されているが、女性の場合男性ホルモンが多すぎると、声が低くなったり、皮下脂肪が少なくなったり、月経異常をおこしたりする。逆に男性で精巣をとってしまうと、体つきが女らしくなり、ひげもうすくなる。